僕がゲイで良かったこと 第35回

第35回 不発弾の話

平良 愛香

 

先日急用があって沖縄に行ってきたのですが、那覇空港の到着口にあった貼り紙に「海岸などで習得された物をお持ちではありませんか? 不発弾の機内持込、お預かりはできません!」と書いてありました。つくづく沖縄だなあと感じます。沖縄に旅行に行く人には、こういった部分に目を留めてもらいたいと思います。(なぜ到着口に?という疑問はありましたが。出発口にも貼ってあったのかなあ)。

そういえば子どもの頃は、掌に入るぐらいの大きさの不発弾や銃弾を海岸や畑でよく見つけました。危険だから絶対触ってはいけないと言われてましたが。(畑では大抵、一カ所にまとめて置いてありました。おそらく畑を耕すときに出て来たものを邪魔にならないようにまとめてあったのでしょう。ガマの入り口などにもまとめて置いてあることがありますね。)

さて、今から30年ぐらい前、「沖縄の不発弾処理はあと80年かかる」と聞いたことがあったのですが、最近の記事だと沖縄の地下に今も眠る不発弾は1878トン(推計)だそうです。あと50年では終わらないだろうなあと感じます。掘り返す前の土地を磁気探査する、というアルバイトもありましたが、ある工事の人は「どんどん不発弾が出てくるから、いちいち行政に報告していると仕事にならない」と言っていました。(余談ですが、群馬で暮らしていた時に工事の人に「どんどん遺跡が出てきて仕事にならないから、価値の有無を判断して埋めることがある」と言われたことがあります。沖縄でも同じことが起きているのでしょうか。)

今からちょうど50年前の1974年3月2日に、那覇市小禄の聖マタイ幼稚園付近で不発弾が爆発し、幼児1人を含む4人が死亡しました。「事故を風化させてはいけない」ということから今年慰霊祭が行われました。今でもその不発弾事故を、痛みを持って覚えている人たちがいます。

74年の事故の後、沖縄県は不発弾対策に乗り出したのですが、情報は住民頼みで十分に対応できず、2009年には糸満市で水道管工事中、不発弾が爆発し作業員の男性が片目を失明するという事故が起きました。この事故を機に県内の全ての公共工事で磁気探査が義務化され、12年には住宅建築など民間工事でも無償で磁気探査ができる制度が整ったのです。

しかし、新聞によると、国が9割負担する不発弾処理交付金事業はここ数年、減少傾向にあり現場に影響が出ているとのこと。「国から効率的な事業執行を求められ、予算全体が絞られている」といって、20年度の32億2900万円が、23年度は27億3100万円と15%以上減少しました。県内のあるマンション建設現場では、施主が磁気探査を申請したものの予算不足を理由に待たされ、やむを得ず50万円以上を自己負担して探査することになりました。磁気探査そのものを諦めた人たちもいます。そもそも民間工事の不発弾探査は義務ではないということから、始めから探査しないケースもかなり増えているようです。県磁気探査協会(宜野湾市)によると、年間の住宅建築工事約6000件のうち磁気探査をしているのは5%弱にとどまっているとのこと。そこには(1)以前から住宅があり、改めて探査する必要を感じない(2)戦後80年近く経過し不発弾のリスクに対する意識が低下した(3)工期が延びる。などの理由が考えられるのです。う~ん、不発弾が無くなったのではなく、意識しなくなった。これは「平和」なのでしょうか。言うまでもなく「以前から住宅があったから」というのは「だから大丈夫」という理由には全くならないのですが。沖縄の不発弾問題は、「戦争は終わっていない」「今でも爆弾で死ぬ危険性が絶えずある」ということを思い出させます。

不発弾ではありませんが、沖縄島北部、やんばるの森で蝶類の研究をしている宮城秋乃さんは、米軍の訓練場跡地である森の中に捨てたおびただしい量の廃棄物があるのを発見しました。空の薬きょう、不発弾、使用済み煙幕手榴弾、使用済み発煙筒、パラシュート照明弾、弾薬箱、バッテリー類、衣類、土嚢、ゴムシート、ケミカルライト、毒性が高く現在使用が禁止されているPCB、農薬のDDT類、BHC類など汚染物質のドラム缶、野戦食袋、飲料水のビンや缶、放置された鉄杭・鉄板、何に使用したのか分からない物など。あまりの有り様に憤った宮城さんは、抗議をこめて空の薬きょうなどを道路に並べたところ、県警から家宅捜査を受け、道路交通法違反、威力業務妨害、廃棄物処理法違反の容疑がかけられて4日間取り調べが続いたとのこと。米軍が放置したものについては黙認し、それを並べると捕まってしまうというのはあまりにも不条理だと感じます。取り調べを受けないといけないのは一体誰なのでしょう。

ちなみにやんばるの森は2021年7月に膨大な「米軍廃棄物」を置き去りにしたままユネスコの「世界自然遺産」に登録されたそうです。

[ライタープロフィール]

平良 愛香(たいら あいか)

1968年沖縄生まれ。男性同性愛者であることをカミングアウトして牧師となる。
現在日本キリスト教団川和教会牧師。

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