「起業」女子 〜コロナ禍でも前向きに生きる〜 第17回

 結婚、出産、転勤、転職、さらに離婚、再婚……。さまざまな人生の転機に、生き方や活躍の場を模索する人たちは多い。しかし、自身で新しくビジネスを立ち上げるのは、容易なことではない。近年、自らの夢を叶えるべく起業した女性たちを取材。明るく前向きに努力を続ける姿は、コロナ禍における希望の光でもある。彼女たちの生の声を聞き、その仕事ぶりや日常に迫る。

きれいなお母さんをもっともっと増やしたい!
Beaute du soleil
セラピスト 佐藤さちよさん

取材・文 伊藤ひろみ
写真提供 Beaute du soleil

佐藤さちよさん(49)が活躍するのは、美容の世界。その技術を磨き、経験を重ね、2020年6月に起業した。セラピストとして、日々お客様の悩みと向き合っている。

自らの知識と腕で勝負。セラピストとして起業した佐藤さちよさん

その道を志すきっかけは、幼いころにあったと振り返る。佐藤さんのお母さんは、美容や健康、心理に関する雑誌や本をよく読んでいたからだ。そんな母の影響からか、自分でも気になり始めたのが目元のしわだった。なんとかしようと、セロテープを張ってみたり、母からもらったパックを試してみたり。このとき、佐藤さんはまだ小学生。しわというより、そう思い込んでしまった何かだったのかもしれない。

さらに、高校生のとき、両頬に気になるものが現れた。当時、ニキビのあとにできたシミではないかと思っていたが、いつまでたっても消えそうにない。アザのように見えるのがつらかったという。そのシミは太田母斑と呼ばれるものだった。30歳のときにレーザー治療を受けるまで、ずっとコンプレックスだった。

高校卒業まで鹿児島で育った佐藤さんは、福岡の短大に進学する。卒業後、東京にあるサロンで仕事が見つかった。「憧れの東京へ行って、やりたい仕事ができる!」と意気揚々だったが、上京することを母に反対された。それを押し切って飛び出したのである。「勢いだけの怖いもの知らず。若かったんですね」と当時を振り返る。

エステティシャンの卵としてスタートを切った佐藤さん。日々その知識を深め、技術を磨く。勤めていたのは、いくつかの店舗を抱え、エステはもちろん、メイクやネイルなども行う総合美容サロンである。来店するお客さんの年齢やニーズもバラエティに富んでいるうえ、学べることも幅広かった。「どうすればお客様が喜んでくださるか」、その答えを探し求めた。そのサロンで約10年働いた。夢中で走り続けた20代だった。

その後、美容外科へ移った。美容外科医が脂肪吸引などを行ったあと、皮膚の弾力を整えるケアを行うのが主な仕事である。このころから、皮膚だけでない何かに注目し始める。エステという枠を超えて、体と心のケアについて学び始めるようになった。

さらに、アンチエイジングのためのリフトアップ専門のサロンへ転職した。施術を行いながら、骨や筋肉に原因があるのではないかと思うようになった。本人も気づかないうちに、左右のバランスが崩れていたり、どこかがゆがんでいたりする人も少なくない。体を支えている骨や筋肉が基本。まずはそれらのケアが必要、という考えに至った。

じっくりと話を聞くことが第一歩。さらに、体のゆがみなどをボディをチェックしたあと、施術へとつなげていく。

そんな中、コロナが猛威をふるい始め、勤めていたサロンも閑古鳥。自宅待機を言い渡され、収入も途絶えてしまう。どうすれば仕事が続けられるか。悩んだあげくに見つけた答えは、自分で始めることだった。コロナ前から、起業塾に通ったりするなど、独り立ちすることも視野に入れて準備を進めていたことが功を奏した。エステティシャンとしての技術と経験に加え、新しい美容の在り方も学んだ。ちょうどそのころから着目するようになったのが、頭蓋骨へのケア。頭を刺激することで、脳から仙骨まで流れている脳脊髄液がスムーズに流れ、人が自ら持っているきれいになろうとする力を最大限に発揮できるようになる。顔のゆがみ、たるみを整え、体全体によい刺激を与える。今までとはまったく異なる施術のありかただった。

 

頭蓋骨を整えることで、全体が引き締まり、顔の長さが短くなったお客様の例。向かって左が施術前、右が施術後。

 

現在は、都内2か所でサロンをレンタル契約し、自身のお客様と向き合っている。主な相談内容はアンチエイジング。頬のたるみをなんとかしたい、顎回りをシャープにしたい、左右のアンバランスな顔を整えたいなどのリクエストに応える。40~50代の女性が中心だが、20代から60代までと年齢層は幅広い。集客ツールはFacebookやInstagram、ECサイトのツクツクなど。定期的にメルマガを配信し、美と健康に関する情報も提供している。

 

頭は体とつながっている。頭蓋骨への刺激はヒーリング効果も抜群。

佐藤さんは、小学生の子ども二人を持つお母さん。起業女子としてだけでなく、母親としての悩みもつきない。仕事の合間をぬってハンディキャップの子どもを持つ親たちとオープンチャットでのコミュニティを作り、そこでも活動している。オンラインでのお話会をしたり、子どもと親が楽しめる企画したりするなど、新たな交流の場となっている。

子育てに忙しいお母さんたちは、とかく自分自身のことは後回しなりがち。「きれいになることで、自己肯定感がアップし、子育ても楽しくなるはず」。自らの経験を踏まえ、彼女らにエールを送り続けている。

 

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[ライタープロフィール]

伊藤ひろみ

ライター・編集者。出版社での編集者勤務を経てフリーに。航空会社の機内誌、フリーペーパーなどに紀行文やエッセイを寄稿。2019年、『マルタ 地中海楽園ガイド』(彩流社刊)を上梓した。インタビュー取材も得意とし、幅広く執筆活動を行っている。立教大学大学院文学研究科修士課程修了。日本旅行作家協会会員。近刊に『釜山 今と昔を歩く旅』(新幹社)。

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