第1回 再び、スペイン語の世界へ飛び込もう
文・写真 伊藤ひろみ
外国語学習に年齢制限はない!――そう意気込んで、国内でスペイン語学習に挑戦したものの、思うように前進しない日々が続いていた。そんな停滞に歯止めをかけるべく、現地で学んでみようとメキシコ・グアナフアトへと向かったのが2023年2月。約1か月間、ホームステイをしながら、スペイン語講座に通った(くわしくは、「もう一度、外国語にチャレンジ! スペイン語を学ぶ ~メキシコ編~」をご参照ください)。
1年後、再び短期留学を決意する。目指したのはスペインの古都トレドである。
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<第1回> 再び、スペイン語の世界へ飛び込もう!
メキシコで学んだことを次へとつなげるために
はじめてのメキシコ・グアナフアト滞在は、スペイン語で現地の人たちとコミュニケーションを取ろうともかぎ続けた時間だった。覚えたはずの簡単な単語が出てこない、動詞の活用に戸惑うなど、できない現実を突きつけられ、がっかりしたり、苛立ったり。そのつらさは過去の海外生活でも経験ずみだが、再びそのジレンマに陥った。
もっと長く滞在したい! そう願ってはみるものの、残念ながら個人的には、1か月程度の短期留学が関の山。後ろ髪をひかれる思いで帰国する。それができただけでもありがたいことなのだが……。
日本に戻り、都内で学習を再開した。帰国直後は学習意欲も満々。だが、3か月、半年と時間が過ぎるにしたがって、高まったスペイン語熱が冷めていくのがわかる。仕事などで必要に迫られるならともかく、日本にいると英語はおろか、スペイン語に接する機会など皆無。一歩教室を出れば、日本語オンリーに戻ってしまう。よほど意識して自分自身で外国語と向き合う時間を作らない限り、レベルアップするのは難しい。大人の事情を抱えながらも、モチベーションを保つこと。これこそが、中高年からの外国語学習の最大のカギだろう。
そして再び、短期留学を検討し始める。グアナフアトを再訪する手もあるし、スペイン語圏の他の国へ、とも考えた。だが、今回はスペインにしぼって準備を進めた。
グアナフアトはスペインのコロニアル都市のひとつ。16世紀なかばに銀鉱脈が発見されたあと、一攫千金を狙ったスペイン人たちが、大西洋を越え、アメリカ大陸を目指した。豪華絢爛な教会、家屋などの建造物、石畳の街路など、スペインを模して開拓された町である。銀で栄えた時代はもはや過去のことではあるが、今なおカトリックが絶大な力を持っていること、スペイン語が公用語となっていることなど、スペインの影響力を抜きにして、この町を語ることはできない。グアナフアトに滞在したことによって、改めてスペインについて深く知りたくなったのである。
ネットに勝る友人たちの力
語学留学を希望する場合、インターネットで情報収集するのはもちろん、留学エージェントを利用するのもひとつの方法だろう。スペイン語圏への留学を専門にしている会社もいくかある。会場型もしくはオンライン型で、留学フェアなどのイベントを行っていることもあるので、参加してみるのもおすすめ。
まず決めなくてはならないのは、スペインのどこに行くかである。マドリッドやバルセロナといった大都市には、いくつもの語学学校や大学があり、選択肢も多い。スペイン語を学びながらインターナショナルな交流ができそうな教育機関もそろっている。また、観光地としても魅力的で、スペイン語学習以外の楽しみも幅広い。
私は両都市には、20年ほど前に一度訪ねている。どちらも観光目的の2~3日の滞在に過ぎなかったので、その思い出もすっかり記憶の彼方。だが、今回はあえてそれらの都市をはずし、今まで行ったことがないどこかでじっくり滞在してみたい、そんな思いを抱いていた。自分なりに情報収集を続けるとともに、スペインへの留学経験がある友人や知人にアドバイスを請うた。
たまたまなのだが、スペイン留学経験者の友人のひとりが、スペインで暮らす日本人とつないでくれた。彼女にこちらの希望を伝えたところ、おすすめのホームステイ先を紹介してくれたのである。それがトレド旧市街に住む家庭だった。
グアナフアトのときもそうだったが、人が人を呼ぶ。アンテナを張りながら、行動に移すこと。言葉にして伝え続けることが大切である。力を貸してくれた人たちに改めて感謝!
いざ、スペインの古都トレドへ
トレドはマドリッドの南、約70㎞に位置している。スペインの地図を見ると、ちょうど真ん中あたりにある町。高速鉄道に乗れば、マドリッド・アトーチャ駅まで、30分ほどで到着する。城壁や門、大聖堂、修道院、博物館・美術館など、小さい町ながら見どころが多い。「もしスペインに一日しかいられないなら、迷わずトレドへ行け」と言われるほど。さらに、スペインを代表する画家、エル・グレコが愛し、暮らした町としても知られている。
今回はトレドへ。そう心が決まった。
[ライタープロフィール]
伊藤ひろみ
ライター・編集者。出版社での編集者勤務を経てフリーに。航空会社の機内誌、フリーペーパーなどに紀行文やエッセイを寄稿。主な著書に『マルタ 地中海楽園ガイド』(彩流社)、『釜山 今と昔を歩く旅』(新幹社)などがある。日本旅行作家協会会員。