僕がゲイで良かったこと 第21回

第21回 僕が(多分)同性婚をしない理由 9

平良 愛香

「婚」が「個人よりも二人を一単位として見てしまうこと」であるなら、それが事実婚であってもなんかやだな。ということを前回書きましたが、今回はもう一つのこだわりについて書きます。

結婚って二人が対等でいられるのでしょうか。いや、もう少し丁寧に書くと「本当は対等でない現状なのに、結婚というシステムで『対等じゃない』ということが隠されているということはないか」という疑問があるのです。(ここまで書いて、「対等」の対義語が存在しないことに気付きました!)

特に男女の場合、そもそも社会の中で男女が対等ではないのだから、よっぽど意識しないと夫婦間にも「対等じゃない」が入り込みます。家事の分担、共有財産の使い方、子どもがいる場合は子育ての在り方、もしかしたら圧倒的にどちらかが決定権をもっていたり、優位な立場にいたりするのかもしれない。片方が専業主婦・専業主夫の場合、稼いでいるパートナーに逆らうのは(そうじゃない場合と比べて)エネルギーがいるのかもしれない。共働きでも収入の格差が家の中での決定権の格差を生んでいるかもしれない。かなりショッキングな話ですが、ある専業主婦は「夫が外で稼いでいるので、家で体を求められても断れない」と言っていました。もはや対等なセックスではありません。(ちなみに、何人もの異性愛女性に尋ねてみたところ、「男性と対等なセックスをしたことがない」と答える人が圧倒的に多かったです。「普段どんなに女性を対等に扱おうとしている男性であっても、セックスになると女性を支配したがる」と言ってました。この文章を読んでいる男性の皆さん、女性たちが(みんなでないにしろ)そう感じているということを知ってましたか?)

DVについても、被害者が女性であれ男性であれ、関係性が対等ではない(相手を自分より下の存在だと見ている)から起こるのだと僕は考えています。そもそも二人が一緒に生きようとするなら、よっぽど意識しないと対等は難しいのかもしれない。ところが「結婚」をすると、それが婚姻(法律婚)であれ、事実婚であれ、「対等である」という前提(というより、努力しなくても対等でいられるという幻想)がそこに生じやすいのでは、と思うのです。これは同性同士でも同じでしょう。同性カップルをたくさん知っていますが、「この二人は対等ではないなあ」と感じるカップルもいるのです。同性パートナーからセックスを求められても断れない人もいるのです。そんなパートナーシップって、何だろうと思わせられるのです。

またまたノロケさせてください。僕とパートナー男性は20年以上お付き合いをしていますが、まだ一度もケンカをしたことがありません。それだけ仲が良い、ラブラブ、とも言えますが、相手にムカついたことは当然何度もあります。けれどお互いに気付いたのは、「相手にムカつくのは、相手が自分に都合のいい人間ではないと感じたときだ」ということでした。生い立ちも価値観も全く違う相手と付き合うと、当然「イヤだな」「合わないな」と感じることはありますが、それは「私にとってイヤだな」であって、相手は「自分にとってはいいやり方をしている」のです。そこにムカつくのは「平良のやり方に従え」「平良の都合のいい人間になれ」ということになってしまう。それじゃおかしい。(そのあと、僕のやり方に相手も相当我慢しているのだ、と気づかされました。)本当に変えてほしいことについては、ムカついたときではなく、お互いにリラックスしているときに、「そういえばさあ、こうしてほしいんだけど」と切り出せばいい。大抵は「うん、努力する」となるし、できないときも「あ、この人はそれが苦手なんだ」「このやり方がいいんだ」と飲み込むことができる。パートナーは自分の所有物ではない、それを認識しない限り、結婚ってとても危険な暴力温存装置にすらなるなあ、と感じるのです。

そもそも、カップル至上主義もおかしい。1人でいるのが嫌だから結婚したりパートナーを見つけたり、というのは選択肢としてあるでしょう。でも「1人でいるのが一人前じゃない」という理由でパートナーを求める、という感覚があるなら、パートナーを自分のステータスの道具としているだけじゃない? パートナーがいて一人前という社会の価値観そのものを問わずに、「自分もその社会の価値観に乗っかろうとする」ということに疑問を感じないといけないだろうな、と思います。

そういう意味で、僕は少なくとも「結婚」を疑っていますし、「パートナーシップって何?」ということを追求し続けています。これが、僕が(少なくとも現時点では)同性婚をしようと思わない理由です。

でもねぇ、9月に同性カップルの公正証書作成に立ち会った際、片方が死んだときの遺産は相続ではなく贈与になるので、税金が高くなることが分かりました。やっぱり同性婚が法的に認められないデメリットも無視できないなあ……。

 

 

[ライタープロフィール]

平良愛香(たいらあいか)

1968年沖縄生まれ。男性同性愛者であることをカミングアウトして牧師となる。
現在日本キリスト教団川和教会牧師。

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