湘南 BENGOSHI 雪風録 第27回

「パワハラ相談」

山本 有紀

職場におけるパワーハラスメントとは、「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの」(①〜③の要素を全て満たすもの)とされている(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第30条の2、事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号))。

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 職場にいる嫌な人の嫌な言動で悩んでいる人はとても多いと思う。

しかし嫌な言動が嫌だということの次の段階として、その嫌な言動がパワハラ(パワーハラスメント)にあたるかは、上記三要件に照らして判断される。

その結果、業務に関連する発言は、多少口調が冷たかったりきつかったりしても、業務上必要かつ相当な範囲内であるとして②を満たさず、パワハラに当たる言動とは評価されないことが多い。

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 では上記三要件を満たす、職場におけるパワハラがあったときどうすればいいかというと、上記法および指針が、会社に対してあらかじめパワハラの相談窓口を設けるよう定めているので、その相談窓口に相談することになる。

同法及び指針は、会社に対し、パワハラがあった場合には事後に迅速かつ適切な対応を行うことも求めている。

また、そもそも会社は、職場において何がパワハラにあたるかと、パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化して労働者に周知・啓発しなくてはならない。

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 しかし、パワハラを防止するための事前の周知・啓発はさておき、パワハラを受けた相手が困って会社に相談するなどして会社がパワハラを把握して初めて、会社がそれに対する手当をするという組立てにとどまる以上、事後的な対応どまりという印象が否めない。

そもそも3要件を満たすパワハラなどというものは、自分より優越的な立場にいる人が、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動をとって仕事の邪魔をしてくるというものなのだから、もはやその人の言動とは、その人が会社から与えられた仕事と関係なくなってしまっている。

職場とは会社が自分に割り当てた仕事をする場所だ、というそもそものことがわからなくなっている人(しかも少なくともその職場の他の誰かよりは上の立場にいる、影響力のある人)による、他人に害をなす言動である。

そこまでの混乱した言動にでている人に対して、会社が事後的な手当てを取るだけで良いのかという疑問が、パワハラの相談を受けていると湧いてくる。

パワハラを防止するための事前の周知・啓発の際には、パワハラ6類型云々よりもまず、職場では会社が割り当てた仕事をしてほしいというそもそものところを、会社があらかじめ、そしておそらく繰り返し、社員に伝えないといけないんだろうなと思わされる。あくまで私見だが、パワハラをやる人はある意味責任感が強くて、自分の中で会社(経営する側)と自分が一体化してしまっていたり、自分の中の、会社の占める割合が大きくなりすぎたりして、そうではない他の人が許せない人だ。

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 不当解雇とか、給料未払いとか、会社それ自体が明確な労働基準法、労働契約法違反にでているという相談は、パワハラの相談に比べると件数が少ない。あるいは、そういう違反を起こしている会社についての相談には、パワハラの問題もくっついて出てくる。

急に理由もなく解雇してはいけないとか給料を踏み倒してはいけないとか会社自体の振る舞い方については、すでに会社側に広く定着しているのだろう。

しかし、パワハラをしっかり防止して就労環境を整え、働いている人のパフォーマンスを上げよう、それによって会社としても利益を出そうという認識が弱い会社はまだ多い。

そして、日本の法律のいうパワハラは、も上に述べたとおりもはやその人に会社が与えた仕事と関係ない言動であって、それが他人を傷つければ、その言動が問題になることは当然である。

それだけでなくて(パワハラに当たらないからセーフ!ではなくて)、職場のある人がパワハラにあたらないまでも無駄に言い方がきつかったり冷たいと、会社は、自らの生産性を下げ、会社の利益も損なうという意識をもってちゃんと手当てをすべきなんだろう。

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お客さんを目の前にして、申し訳ないけど今の日本の法律ではその上司の言動はパワハラとまでは評価されないでしょうというとき、そしてお客さんがもう職場に行くのが怖いし会社に言っても期待できないから退職を考えますというとき、お客さんに対してはもちろんそうだが会社にとっても勿体ないなと思うのだった。

 

 

[ライタープロフィール]

山本有紀

1989年大阪府生まれ。京都大学卒業。
大学時代は学園祭スタッフとして立て看板を描く等していた。
神奈川県藤沢市で弁護士として働く。
宝塚歌劇が好き。

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