「年頭所感」
山本有紀
年始早々この原稿を冷や汗かきながら書いています。担当者の方に申し訳ないという気持ちでいっぱいです。でもどうして。どうして毎回1ヶ月猶予があるのに、いつもギリギリになるの。なぜあなたはいつもそうなの。
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ギリギリになる理由は毎月一緒で①普段の仕事が忙しい、②原稿に書ける大きい出来事は毎月は起こらない、そして③ここに書ければ第三者からは興味深くても、書いた自分がまずくなるということばかりやたらあるという3点だ。
まずい理由にも同じように3つあって、1つは弁護士の守秘義務に違反してしまうというもの。これは本当にまずいですね。決してやってはいけません。これにより大体8割のことは書けなくなります。2つ目は新型コロナウイルス感染拡大防止に配慮が足りないと指摘を受けそうなもの。3つ目は、それやる暇あるなら仕事してくださいといわれそうなもの。
2つ目と3つ目で2割に達します(8+2=10)。
でも今回は、今回ばかりは2つ目と3つ目を併せたできごとについて書きます。
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ブロードウェイのマジェスティック劇場でオペラ座の怪人を見ました。
すごいぞオペラ座の怪人。
劇中みんな歌上手い。体も大きくて迫力がすごい。衣装は超豪華。劇場自体が演劇を構成している。仕掛けはシンプルだけれど装置は豪華で、転換はとてもなめらか。
ファントム(オペラ座の怪人)役の人がうつ伏せになりながら大きい声で歌う! マスクが取れた後のメーキャップも作り込まれていました。そして最後の挨拶はにこやか&シンプル。序盤、オーケストラが主題歌を奏でると後ろの観客が歌い出したのには笑いました。みんなで楽しもうね。
ファントムはヒロインのクリスティーヌのことが好き。でも彼女のことをヘルシーには愛せない。クリスティーヌを自分の思い通りにしたい。そういうアプローチの仕方しかわからない。俺は彼女のために色々骨を折ってやったんだ。
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前回に続き今年に入ってからも、労働問題・労働条件に関する啓発授業に行きました。残業時間の上限規制について説明しました。長時間労働が及ぼす心身への悪影響と、それによって多くの人たちに起こってしまったことを学生さんに伝えました。学生さんはやっぱり一生懸命きいてくれました。
でも私自身はどう? 仕事のメールを夜中でも返す。タイムカードをつけてくださいとお客さんに言うけど自分は全く付けていない。休みの日だって労働上等!
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仕事を一生懸命します。けれども今年は、ちゃんとお休みをとりたいと思います。思索する時間がないまま(思索してる時間も仕事の時間だと思うけれども)、この原稿がやっつけ仕事になってしまっているのではないかと感じてすごく辛い。ちゃんと時間をとって、構成を練って、書くべきなんだ。
女性の弁護士が啓発授業に来てくれたのは初めて、と先生に言われました。確かに女性の町弁は少ない。そもそも司法試験合格者に占める女性の割合自体低いけれども、そこからの選択肢として裁判官、検察やインハウスを選ぶ女性が多い。なぜといって一つの大きな理由に、それらの仕事は労働環境・制度が整っているからです。この仕事はすごくやりがいがあるけれども、労働環境の面で整っているところはまだ少ないと思います。確かに長時間やるとその分お客さんが来てくれる。でも今年こそはちゃんと休息したり勉強したりにも時間をあてたいと思うのでした。
[ライタープロフィール]
山本有紀
1989年大阪府生まれ。京都大学卒業。
大学時代は学園祭スタッフとして立て看板を描く等していた。
神奈川県藤沢市で弁護士として働く。
宝塚歌劇が好き。