第13回 まだまだある! トレドの魅力
文・写真 伊藤ひろみ
外国語学習に年齢制限はない!――そう意気込んで、国内でスペイン語学習に挑戦したものの、思うように前進しない日々が続いていた。そんな停滞に歯止めをかけるべく、現地で学んでみようとメキシコ・グアナフアトへと向かったのが2023年2月。約1か月間、ホームステイをしながら、スペイン語講座に通った(くわしくは、「もう一度、外国語にチャレンジ! スペイン語を学ぶ ~メキシコ編~」をご参照ください)。
1年後、再び短期留学を決意する。目指したのはスペインの古都トレドである。
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<第13回> まだまだある! トレドの魅力
町いちばんの賑わい、ソコドベール広場
トレドに滞在することになって約半月。たまたまの縁がつないだ場所であったが、すっかりこの町に魅了されている。マドリッドやバルセロナなどとは異なり、町の規模はかなり小さい。だが、教会や博物館など主要観光スポットはほぼ徒歩圏内。町並みが独特で、歴史的、文化的にも奥が深い。大都市などに比べて、治安もよく、問題なく一人歩きもできる。
町の中心、ソコドベール広場(Plaza de Zocodover)はいつも観光客であふれている。広場のまわりには、レストランやカフェ、みやげもの店などが軒を連ねる。のんびりくつろぐ人、待ち合わせする人などが広場にあふれ、町いちばんの活気を呈している。
ユニークなのは、ここでウォーキングツアーガイドに会えること。タイミングがあえば、彼らが旧市街を案内してくれる。傘を広げて目印にし、客を集めている。

旧市街の中心、ソコドベール広場。フリーツアーと書いた傘を持つ人が目印
発見がいっぱい。トレド人が案内する旧市街
トレドに滞在してすぐのころ、スペイン語のウォーキングツアーに参加した。案内するのは、トレド在住の30代半ばくらいの女性である。外国人観光客20人ほどが集まったところで、ソコドベール広場を出発した。まずは広場を南に下り、大聖堂(Catedral)前の広場へ。そこで大聖堂について、あれこれ説明してくれる(大聖堂については、第10回を参照してください)。そこから南に下り、修道院や教会を回り、エル・グレコ博物館、さらにタホ川沿いの広場で小休止。さらにユダヤ人地区の細い通りを練り歩いたり、眺めのいい高台に出て写真を撮ったり。最後はまた広場近くへ戻って解散となった。
博物館や教会などの内部見学はしない。あくまで通りを歩きながら、トレドの町について説明するスタイルで、ツアー時間は1時間半ほど。参加したのはスペイン語バージョンだったので、残念ながら私の理解が及ばないことが多々あったが、どこに何があるかを把握したり、観光名所のポイントをおさえたりするのにちょうどいい。意外な裏道や写真映えするスポットを教えてもらうなど、地元のガイドならではの情報は貴重である。ガイド料がいくらと決まっているわけではないようだが、解散前にツアー参加者はガイドにチップを払うスタイルだった。時間帯によっては、英語バージョンでの案内も行っている。
町を歩いて気づくことのひとつは、いくつか日本食のレストランがあること。昨今、すしやラーメンなどは世界的にもポピュラーなメニューだが、ここトレドでも人気が高いようである。もっとも、それなりの料金なので、彼らも気軽に利用しているわけではなさそうだ。値段もさることながら、こちらが気になるのは本物の味かどうか(海外では、なんちゃって和食レストラン多いので)。「ここであえて日本食を食べなくてもなぁ」と思っているうちに、結局一度も足を運ばずに終わってしまったけれど。

すしやラーメンなどと書かれた和食レストランはトレドでも人気のよう
観光案内所を上手に利用する
トレドの情報を得る手立てとして、観光案内所を訪ねてみるのもいいだろう。観光案内所のひとつは、トレド市役所(Ayntamiento)の建物内にある(大聖堂が見える広場の南)。私はここで、旧市街の地図やパンフレットなどを入手した。開所時間には係員もいるので、何か知りたいことがあれば、教えてくれる(スペイン語もしくは英語での案内)。
もうひとつは、県議会(Diputación Provincial)の建物の北。ここは旧市街の北の端にあたり、すぐ前の長いエスカレーターを降りると、城壁の外に出る。この観光案内所もスタッフが常駐している。
観光案内所でもらった地図には、ビサグラ門(Puerta de Bisagra)の北にも i マークがついていたが、そこは使われていなかった。また、サンタ・クルス博物館(Museo de Santa Cruz)前にも案内所のブースを見かけたが、いつ行っても開いていることはなく、係員らしき人も誰もいなかった。
わざわざ観光案内所へ行かなくても、地図や観光地、レストラン案内などインターネットで検索すれば必要な情報は入手できる時代である。それもあってか、紙ベースのパンフレットなどは、どこも少なくなりつつある。私にはアナログ的情報がありがたかったし、係の人とスペイン語で話す機会としても、これらの存在は貴重だった。

旧市街にある2か所の観光案内所のひとつ。旧市内の地図はスペイン語版と英語版を置いていた
★観光案内所+α情報。トレド市役所の観光案内所の横には、公衆トイレあり!
海外で町歩きする際、気になることのひとつはトイレの場所。日本と違って、駅や建物内など、気軽に利用できるところがほとんどない。用を足すために、そのつどカフェやレストランを利用するのも面倒である。私は海外で町歩きする際、まずトイレの場所を確認するようにしている。ちなみに、トレドの旧市街の建物外で利用できるトイレは、ここだけだった。
トレドでおみやげを買うなら?
トレドのおみやげも気になるところだろう。
おすすめなのがマサパン(Mazapán)。アーモンドパウダー、砂糖、卵を使って焼き上げた素朴な味のお菓子である。マサパンはあちこちで販売しているが、ソコドベール広場にあるサン・トメ(Santo Tomé)が特に人気が高いよう。普段のティータイムに、おみやげにと買いに来る客でいつも賑わっている。こうしたスィーツショップだけでなく、オリジナルマサパンを作っている修道院などもある。

マサパンの人気店、サン・トメ。ソコドベール広場前のほか、サン・トメ通りにもある
また、象嵌細工の金・銀製品、刃物なども名産のようで、それらを販売する店をいくか見つけた。物によっては持って帰るのが難しいかもしれないが、手の込んだ品々を眺めているだけでも興味深い。
トレドに限ったおみやげではないが、スペインワインもファンが多い。私は酒好きの家族のために、ワインとシェリー酒を購入した。帰国後もスペインの味を楽しみたい人には、ジャムやはちみつ、缶詰類などもおすすめ。
これらの店は、ソコドベール広場、大聖堂付近に多いが、意外な細い通りで見つけることも。のんびり歩いてこそ、得られる発見がある。

アルコール類、雑貨など。ぶらぶら歩きながら、掘り出しものを見つけるのも楽しい
マドリッドからトレドまでは車で1時間ほどの距離。だからか、首都で滞在し、日帰りでトレドを訪れる観光客がほとんどのようである。見どころが盛りだくさんのトレドを半日や1日だけでは、もったいない。ぜひじっくり町歩きをしてほしい。
[ライタープロフィール]
伊藤ひろみ
ライター・編集者。出版社での編集者勤務を経てフリーに。航空会社の機内誌、フリーペーパーなどに紀行文やエッセイを寄稿。主な著書に『マルタ 地中海楽園ガイド』(彩流社)、『釜山 今と昔を歩く旅』(新幹社)などがある。日本旅行作家協会会員。