赤毛のアンのお茶会 最終回

第46回 なぜ『赤毛のアン』は、様々な世代に愛されるのか?

南野モリコ

約4年間に渡って『赤毛のアン』愛を語り続けたこの連載も今回でついに最後となりました。最終回の今回は、筆者モリコの独断と偏見で、なぜアンは、時代を超えて様々な世代に愛されるのかについて深読みしてみました。「ふーん、へえ、そんな考え方もあるのね」とクリスマス・プディングを食べながら気楽にお読み下さい。

『赤毛のアン』は、「努力、友情、勝利」の物語

『赤毛のアン』は、プリンスエドワード島のアヴォンリー村に住む、結婚せずに年をとったマシューとマリラ兄妹のところに、孤児院から「男の子と間違って」送られてきたアン・シャーリーが持ち前の明るさで周囲を巻き込みながら幸せになっていく物語です。

『赤毛のアン』と言えば、関連本として物語に登場する料理のレシピ集が数多く刊行されていることから、女性向けの作品と思われがちですが、男性の読者ももちろん数多くいらっしゃいます。脳科学者の茂木健一郎氏が同作のファンであることを公言していることからも明らかです。

『赤毛のアン』がこれほど広く読まれるようになったのは、ひとつには日本アニメーションによるアニメ作品(1979年)の影響が大きいと思います。

しかし、さらに言えば、『赤毛のアン』が11歳の少女、アンという少女が主人公であるにも関わらず、『少年ジャンプ』に代表される少年漫画の「努力、友情、勝利」の三要素が描かれていることも大いにあるのではないでしょうか。

アンは、孤児という恵まれない境遇であったことから学校にもあまり行っておらず、勉強もアヴォンリー村校の他の同年の子どもより遅れていた筈です。また苦手な幾何にも諦めずに取り組んでいることから、努力家であることが認められます。

ダイアナとの友情、そして、クイーン学院を優秀な成績で卒業し、大学進学するためのエイヴリー奨学金を勝ち取るという勝利を収めています。少女小説とも言われる『赤毛のアン』ですが、「努力、友情、勝利」という少年漫画の三要素が成立しますよね。ま、単なる深読みですけどね。

『赤毛のアン』に通じる少年漫画は、アニメにもなったあのサッカー漫画。

ところで、『赤毛のアン』によく似ている少年漫画と言えば、やはりアニメにもなった『キャプテン翼』(集英社、1982年~1988年)でしょう。

同作の主人公、大空翼は、アンが勉学に打ち込むのと同様、ひたむきにサッカーに取り組んでいます。

岬君、若林君、三杉君ほかサッカーを通じての仲間との友情、また多くの強豪チームのライバルたちに打ち勝っていく姿は、ダイアナほかアヴォンリー村校の同級生に励まされながらエイヴリー奨学金を目指して勉強に励むアンに通じるものがあります。

それに『キャプテン翼』は少年向けコミックでありながら女性にも人気があるところも『赤毛のアン』と重なりますよね。

まあ、ひとつ大きくことなる点は、アンはマリラに「失敗の天才」と言われ、楽しい失敗が多いけれど、翼君は絶対に失敗しないという点でしょうか。ま、単なる深読みですけどね。

いかがでしたか? これで『赤毛のアンのお茶会』は最終回となりますが、筆者モリコの深読みはこれからも続きます。またどこかでお目にかかれますように。長い間、お読みくださった腹心の友の皆さま、ありがとうございました。

 

 

参考文献
モンゴメリ著、松本侑子訳『赤毛のアン』(文藝春秋、2019年)

[ライタープロフィール]
南野モリコ
赤毛のアン深読みニスト。慶應義塾大学文学部卒業(通信課程)。映画配給会社、広報職を経て執筆活動に。共著に『読んではいけない オトコとオンナ愛の言葉 101の映画名セリフから』(2004年、日経BP社)がある。

X(旧Twitter):南野モリコ ID @names_stories

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