スージー鈴木のロックンロール・サラリーマンのススメ 第28回

第28回 新入社員に告ぐ――狭き門から入ったのは狭き世界だ

スージー鈴木

 

今回は、2024年度の新入社員に語りかけます。入社して半月、どうでしょうか。もう実務に入って「OJT」とかしているのでしょうか。それともまだ研修中かしら。

 

「案外楽しいよ」という人も、「もう辞めたくなっている」という人もいるかと思います。そういう方は初任給でまず、スージー鈴木の新刊『サブカルサラリーマンになろう』(東京ニュース通信社)を買えばいいと思うのですが、それはともかく。

 

いずれにせよ、多かれ少なかれカルチャーショックの中に放り込まれたことだと思います。大学時代に培ったちっぽけな自尊心が踏み潰されるような体験をした人もいるでしょう。それで「思えば、とんでもないところに来たもんだ」と感じた人も――。

 

先にいっておけば、人生の中で、そういう経験があっても、私はいいと思うのです。これまで歩んできた人生が相対化される、客観視できるチャンスはそうはありません。もしかしたら次は転勤とか転職とかするまでチャンスはないかもしれない。だからクヨクヨせず、カルチャーショックを楽しんだほうがいい。

 

ただ、これだけは知っておいてほしいと思うことがあるのです。

 

就職することを「社会という大海原に出る」的に表現することがありますが、それ違うのではないか、ちゃうんちゃうか、ということなのです。

 

「会社というのは狭いところだぞ、仕事という狭い世界に押し込まれようとしているんだぞ」

 

略して「サブサラ」、好評発売中です。

 

  • 仕事以外への視野を狭くする装置としての会社

 

「働き方改革」が叫ばれる今は、私が入社した30数年前とは違うだろうと思いつつ、それでも会社というものは、いったん入ってしまったら「24時間、仕事のことばかりに集中しろ」という空気が充満している。結果として、仕事以外への視野がどんどん狭くなっていく。

 

ひとつ、分かりやすいリスマス試験紙があります――自分の会社を「うち」と言ってしまったら要注意。

 

「うち」とは「家」、自分の身体と心が帰るところ。つまりそれくらい会社人間になっているということ、それくらい会社以外の世界が見えなくなっているということ、なのです。

 

私にいわせてみれば、会社なんかより、大学のほうがよっぽど広い世界だと思うのですが、それはさておき、だから、入社したら、意識的・積極的に外の世界とつながっていなければならない。まずは家族、学生時代の友だち、さらに趣味や地域やボランティアやあれこれに。

 

そうしないと例えば、会社の中で自分の評価が下がったり、降格させられたり、左遷させられたりしたら、もう一生がダメになるような絶望のように感じてしまうのです。

 

かくいう私もかなり会社人間だった時期がありました。会社でいろいろあって、一生分の絶望を感じたこともありました。でも辞めてしまったら、「あのとき何であんなに悩んでしまったのだろう」と不思議に思って笑えてきます。それどころか、今となっては何で悩んでいたのかさえ、思い出させない。

 

というわけで、カルチャーショック大いに結構ですが、とにかく視野を広く持って、会社に囚われすぎないようにしましょう。

 

「狭き門より入れ」といいます。人気企業の「狭き門」より入ったかもしれませんが、入ったところも「狭き世界」なのです。だから視野を絶えず広く広く保つよう、意識しなければならない。

 

では、視野を広く保つためにはどうすればいいのか。そのヒントは、スージー鈴木の新刊『サブカルサラリーマンになろう』(東京ニュース通信社)書いているのですが、それはともかく――。

[ライタープロフィール]

スージー鈴木(すーじーすずき)

音楽評論家、小説家、ラジオDJ。1966年11月26日、大阪府東大阪市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。音楽評論家として、昭和歌謡から最新ヒット曲までを「プロ・リスナー」的に評論。著書・ウェブ等連載・テレビ・ラジオレギュラー出演多数。

著書…『サブカルサラリーマンになろう』(東京ニュース通信社)、『〈きゅんメロ〉の法則 日本人が好きすぎる、あのコード進行に乗せて』(リットーミュージック)、『弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる』(ブックマン社)、『中森明菜の音楽1982-1991』(辰巳出版)、『幸福な退職 「その日」に向けた気持ちいい仕事術』『サザンオールスターズ 1978-1985』『桑田佳祐論』(いずれも新潮新書)、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『平成Jポップと令和歌謡』『80年代音楽解体新書』『1979年の歌謡曲』(いずれも彩流社)、『恋するラジオ』『チェッカーズの音楽とその時代』(いずれもブックマン社)、『ザ・カセットテープ・ミュージックの本』(マキタスポーツとの共著、リットーミュージック)、『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『カセットテープ少年時代』(KADOKAWA)、『1984年の歌謡曲』(イースト新書)など多数。

 

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