僕がゲイで良かったこと 第23回

第23回 僕はウチナンチュ 2

平良 愛香

 

前回、自己紹介として、「1文字の「平」ではなく、2文字の「平良」です。この2文字を見て「沖縄にルーツがある人かな」と思ってもらえたら嬉しいです」と書きました。でも「嬉しいです」の一言で片づけて良かったのかしら、と後であらためて考え込んでしまいました。この1字と2字の違いって、思っていた以上に大きいと感じていることに気付いたからです。

琉球の人々が1609年に薩摩に侵攻され、1624年に「大和めきたる名字の禁止」の通達が出された際、姓を持っていた士族たちの日本風の姓は改められるか、当て字を換えて三字姓などに改称したようです(強制だったかどうかは意見が分かれているようですが)。ただ、薩摩は琉球を支配下に置きながらも、日本風の姓を名乗ることを許さなかったのは事実のようです。(「琉球王国」という名前だけは残し、琉球を表向き「外国」のままにしておきたかったと考えられていますが、その理由は、「中国と深い関わりのあった琉球を表向き独立国として残し、薩摩と中国との軋轢を避けようとした」という説や「外国を支配したという形にして、幕府に対して薩摩藩の影響力を誇示した」という説があります。両方かもしれませんね)。これが「琉球王国」という名前が残った理由であると同時に、沖縄に独特な姓が多くなった理由の一つと言えます。

明治時代になると、1875年の琉球処分(「琉球処分」についてはまた後日書きますね)の際、これまで姓を持っていなかった庶民も全て姓を名乗ることが義務付けられ、それまで住んでいた地名や屋号を通り名として使っていた人たちは、それにアレンジを加えて名字にしたようです。「平」という通り名だった人たちが「平良」姓になったという経緯がそこにあるようです。それが、沖縄に独特な姓が多い二番目の理由と言えるでしょう。(ちなみに「平良」という地名は現在でも沖縄に何か所もあります。そのためか、「平良」という姓を名乗っている人も沖縄にはとても多く、いつも10位以内に入っています。)

ところが、明治・大正・昭和と、日本が天皇制を中心とした国造りを進める中で「琉球語は劣った言葉である。日本語を使うように」と強く指導された沖縄では、「沖縄風の名前も恥ずかしいものである。日本風に変えねば。」と考えた人たちがいたようです(これも、そういった指導があったと言う人と、「指導はなかったがそう思いこんで日本風の名前に変えた人たちがいた」ということを言う人がいます。けれど、仮に「自主的に変えてしまった」のであったとしても、そこには「琉球人であることが恥ずべき事。立派な日本人になることが正しい事」という教育があったことは大きいでしょう。「くしゃみも日本風にしなければならない」という笑い話が当時あったぐらいですから)。「読み間違いを避けるために変えた」「読みにくいので変えた」と言われることもありますが、沖縄差別が激しくなった戦前戦後、沖縄出身であることを隠すために変えた人がいたということも否めません。1文字に変更した(戻した?)沖縄の「たいらさん」もいるようです。実は私の母の実家(和歌山)に父方の祖父が沖縄から挨拶に来たときに、宿帳に「鹿児島のたいら」と記帳したと母が聞いたのだそうです。「たいら」をどのように記帳したかはもはや知る由もありませんが、もしかしたら「平良」ではなく「平」だったのかもしれません。いずれにせよ、堂々と「沖縄の」と書けない何かがあったのでしょう。

そういう話や歴史を聞いていく中で、私は2文字の「平良」を「日本に翻弄されながらも、ときには差別されながらも、結果的に独自の名乗りとなった名字」という意味で大切にしています。現在でこそ、2文字の平良であることで差別される、ということはないと思いますが(もし「いや、2文字の平良であることで差別されている」という経験がある方がおられたら、是非共有したいです<情報をお寄せくだされば嬉しいです>)、それでも「2文字であることを隠さないといけないと思った同胞たちがいる」という事実は重く考えています。名前だけでも「沖縄にルーツがある」ということをアピールできる、大きな記号になっているからです。ですからメールの文章などで間違って1文字の「平さん」と書かれると、「沖縄にルーツがあるということを丁寧に受け取ってもらえなかったな」とかなり残念に感じてしまうのです。ただのケアレスミス、変換ミスかもしれません。でも「そこは間違えてほしくない」といつも感じるのです。歴史的に日本に組み込まれたり切り離されたりしてきた沖縄。名前一つとっても、「簡単に日本の一地方だとは言わせないよ。日本に翻弄されてきたんだよ」という思いが私にはあるのです。

今回の話は、コラムというより、レクチャーみたいになっちゃったかもしれませんね。次回は「では沖縄ってどこ?」という話をしてみたいと思います。

 

[ライタープロフィール]

平良愛香(たいらあいか)

1968年沖縄生まれ。男性同性愛者であることをカミングアウトして牧師となる。
現在日本キリスト教団川和教会牧師。

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