耳にコバン 〜邦ロック編〜 第23回

第23回「ガッキー論」

 

コバン・ミヤガワ

 

「ガッキー」はどうしてあんなにも魅力的なのか。

 

 

ガッキーは、時に凛とカッコよく、時には底抜けに可愛い。ボクは子供の頃から、ガッキーのことが好きだった。

 

雪山では、女の子は3割増しで可愛く見えるらしい。それは、雪に反射した太陽光が肌を白く見せるからだって。スノボウェアなんかも可愛く見える要因らしい。

しかし、ガッキーはその比ではない。ボク的観測によると、3倍である。ガッキーは、3倍可愛く見えています。

 

ちなみに、ボクが言っているのは「新垣結衣」のガッキーではない。星野源と結婚し、とうとう人妻になってしまった、あの「ガッキー」ではない。

楽器を弾いている女の子のことを、ボクは勝手に「ガッキー」と呼んでいる。

ピアノを習っている人も、吹奏楽部も、もちろんバンド活動をしている人も、皆が「ガッキー」なのである。楽器ができる女性と結婚した人はもれなく「ガッキーと結婚した」と言えなくもないワケだ。「ガッキーロス」に一筋の光が見えましたね。

 

やっぱり、文化祭の吹奏楽部の演奏なんて、もう「ガッキーだらけ」である。たくさんのガッキーがステージで演奏するわけだから、それはもう見逃せないのである。サックスなんかを一生懸命に吹いているのも素敵だし、チューバとかコントラバスとか、小柄な体で大きな楽器を見事に操っているのを見ると、カッコいいわけである。

 

野球の応援の時のガッキーなんかもいいね。

ボクの通っていた高校では、毎年、大きな球場で県内4つの高校が野球の試合をするイベントがあった。炎天下の中、汗だくになりながら、好きでもない野球の応援をしなければいけないのだ。高校野球の応援で何より大変なのは、他でもないガッキー達だ。試合の最中は常に演奏をしなければいけないし、そうそう休憩もできない。日焼けはしたくないだろうに、顔を真っ赤にしながら、頑張って演奏しているわけである。

ボクはもう、野球よりもガッキーを応援していたと言ってもいい。

チアリーダーまがいの、よく分からんダンスチームがキャーキャー言われていたけど、そんな連中より何倍も魅力的だったのである。

 

あとはやっぱりガールズバンドですね。「ガールズバンド」って言葉も今や死語なのかもしれないけれど。バンドガッキーも尊敬しちゃうワケ。

思春期ドンピシャの頃に『けいおん!』というアニメが始まって、ガールズバンドブームに火がついた。アニメは観ていなかったけど、確かにガールズバンドを目にする機会は増えたと思う。

あの頃から「愛らしさ」と「ロック」の同居みたいなことが始まった気がする。

 

しかし、いわゆる「ガールズバンド」は昔からいたわけで。1980年代から活動している『少年ナイフ』や『プリンセスプリンセス』、2000年代初めには『Whiteberry』や『ZONE』といったバンドが人気を博した。

 

そんな中でも、ボクにとって、このバンドは特別である。

 

「チャットモンチー」

 

2010年前後のガールズバンドといえば、チャットモンチーがまず挙がることだろう。2000年に結成され、2005年にメジャーデビューを果たす。「ガールズバンドブーム」の草分け的存在である。

 

チャットモンチーを知ったのは、中学生も終わりの頃だったと思う。夏フェスのライブ映像を見ていた時、チャットモンチーのライブ映像が流れてきた。3人組のガールズバンド。大きなステージが、もっと広く見える3人。機材も最低限といった感じで、こじんまりと見える。

 

しかし、ボクはこの映像を観たときに感動したのだ。華奢な彼女たちが、何万人という観客の前で飄々と演奏している姿に。ギターボーカルの橋本絵莉子(えっちゃん)が、少し大きなギターをかき鳴らす姿に。

観客が一体となり、まるで大きな波のうねりのように、熱狂している。

「イェーイ!」とか「叫べー!」とか、オーディエンスを焚き付けるようなことはしない。ただ自然体で、音に身を任せるように、ロックしている。

それが可愛かったし、とてつもなくカッコよかった。

 

ロックってどうしても、カッコつけるものだと思う。そうあるべきだとも思う。サウンドにしても、歌詞にしても、カッコつけるということはロックにおいて重要な要素だし、それを求めている。

でも、彼女たちは自然体。自然体というよりも、素朴と言った方がしっくりくるかもしれない。ふらっとステージにやって来て、ふらっと演奏して帰る。

パフォーマンスや楽曲にしても、変に飾らない。そんな素朴さがある。しかし、そこに込められた熱量。それが無茶苦茶カッコいい。

 

あれこれ言ったが、チャットモンチーは楽曲も純粋に素晴らしい。ガールズバンドだなんだと言う前に、曲がいい。3ピースだからこそできるヌケ感と、それらが複雑に絡み合う楽曲。耳に残るメロディー。可愛いんだけど哀愁漂う歌詞。

ガールズバンドとしての枠組みに囚われずとも、チャットモンチーは邦ロックの偉大なレジェンドである!

 

今も多くの「ガールズバンド」が活躍している。『SHISHAMO』『赤い公園』『Hump back』など枚挙に暇がないくらいだ。しかし、彼女たちが、チャットモンチーに影響されていないというのは嘘になるだろう。それほど、邦ロックにおいてチャットモンチーの残した足跡と、背中はずっとずっと大きいのだと思う。

 

気になった方は『生命力』から聴いてみてはいかがでしょうか。代表曲の「シャングリラ」から「世界が終わる夜に」「バスロマンス」など、色んな感情にさせてくれるアルバムです。

 

 

 

[ライタープロフィール]

コバン・ミヤガワ

1995年宮崎県生まれ。大学卒業後、イラストレーターとして活動中。趣味は音楽、映画、写真。
Twitter: @koban_miyagawa
HP: https://www.koban-miyagawa.com/

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