湘南BENGOSHI雪風録 第38回

例によってNHK朝の連続ドラマ「虎に翼」を見ています。

ヒャンちゃんには再会!寅子とよねは今後どうなっていくのかな。涼子さまや梅子さんはいつ出てくるのかな……!

とらちゃんとよね・涼子さま・梅子さんとの違いは、とらちゃんが家族に恵まれていることなのかなと思います。

とらちゃんが家庭裁判所で家庭の問題に関わっていく中で、家族に恵まれていることが当たり前ではないこと、家族のあり方が人生の充実や自己肯定感に大きく影響することにとらちゃん自身が気づいていくのかな。家族が揃っているか、裕福か等ではなく、家族に大事に思われていること、とらちゃんらしい生き方を尊重されていること。同時にとらちゃんも家族のそれぞれを大事にして、その人らしい生き方を応援できること。そういう意味で、多岐川判事が愛、愛言ってることの意味をとらえるようになるのかな。

問題を抱えたあり方を描くのはかえって易しく、愛のあるあり方は空気のようなもので表すことが難しいからこそ、そのまさしく空気のようなものとして優三さんが当時の姿のまま今もとらちゃんの隣に現れるのかなと思って見ています。

ところで、日本中のすべての弁護士が登録している日本弁護士連合会も、家庭裁判所と同じ1949年に設立されました。今年は初めて女性の日弁連会長が選出された年です。正直遅くはないかい。弁護士全体に占める女性弁護士の比率は未だ20%にとどまっており、10%を下回る県もあります。

とらちゃんが弁護士ではなく裁判所で仕事をはじめたのが、仲間を一人減らしたようで、若干さみしく感じられる今日この頃なのでした。ただ私はとらちゃんらしい生き方を尊重し黙って見守ります。

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前回に続き、今回はパワハラの防止にあたって、事業主(会社)側に求められる対応について説明します。

2022年4月以降、すべての企業に、パワハラを防止し、パワハラが生じた場合には適切に対応し、再発防止を図る義務が課せられています。

具体的には、

① パワハラに関する事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

② パワハラの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備

③ 職場におけるパワハラへの迅速かつ適切な対応

が柱となります。

実際に相談を受けると、会社が①②は概ね整えていても、③の対応を適切にできていないという事案が多いように思います。

③に関して、厚生労働省はさらに細かく、(1)事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること、(2)パワハラが生じた事実が確認できた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと、(3)行為者に対する措置を適正に行うこと、(4)改めて職場におけるパワハラに関する方針を周知・啓発する等再発防止に向けた措置を講ずることを求めています。

(1)の事実関係の確認を、会社がまるで相談者の不満、愚痴を聞くようなつもりで聞いてしまい、もやっと全体をとらえてしまった上で、まあまあそんなのはよくあることだからあなたもあまり気にしないようにしてください、とか、あの人は前からそういう人なんだよね、会社も困ってはいるんだけどね、等と相談者をいなしてしまうパターンが極めて多いように思います(ここでちゃんと会社が対応できていれば弁護士へ相談せずに済んでいるのだと思います)。

しかし、職場のパワハラについて会社に相談する局面というのは、同僚同士あるいは家庭で不満、愚痴として吐き出している段階を超えて、相談者は限界にきており、同時に会社を最後の頼みの綱としているので、この段階で、会社が相談者をいなし、相談者を動かして会社の現状に調子を合わせてもらおうとするのは効果がないし、もっと大きな結果を引き起こすことにつながります。

また、行為者側に事実確認をする際、行為者はやってません、誰がそんなこと言ってるんですか!?/あの人私についてそんなこと言ってるんですか!?と反応することが大半です。

このとき、事実確認をする側が、行為者に強く出られない力関係にある事例も見聞きします。

そして、行為者がやっていないと強く否定したので、会社が被害者側に、行為者はやってないって言ってるのでやってないです、と安易に伝えてしまうパターン。ああ。

厚生労働省は、事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認していると認められる例として、「相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。」「確認が困難な場合などにおいて、法第30条の6に基づく調停の申請を行うことそのほか中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。」を挙げています。

行為者が否定したことをもって、それ以上の事実確認・調査をせず、行為者がやっていないといっているのでやっていません、と会社が応答すれば、相談者は、意を決して会社に相談したのに、会社は行為者の肩をもっていると捉えるのは当然のことです。同時に、どんな人でも自分の落ち度を素直に認めるのは難しいことです。

また、ハラスメントについて認定できないとしながら、相談者の方を配置換えするなど、これも相談者を動かす方法でなんとかしようとすることは余計に事態を悪化させます。

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パワハラの行為者はまずパワハラの事実を否定します。それを前提に録音等一定の対策を考える必要が出てくることが残念ながらあります。

特に、少人数の会社では、ハラスメント窓口担当者や職場の全員からパワハラを受けることがあり、第三者への聞取りの効果あるいは聞取りの実施それ自体を期待できないことがあります。そうなると

証拠は録音等に限定されてきます。

他方で、複数人で無視したり、仕事を取り上げて外してしまったりといった、録音に残らないタイプのハラスメントも存在し、どんどん巧妙・陰湿になっているという印象を受けます。

規模の小さい会社に就職するのであればなおのこと、就職活動の時点から、労働条件のみならず仕事場の雰囲気をみて仕事を選ぶ必要があるのかもしれません。目には見えないけれども一定のよい協力関係、信頼関係を作れる同僚がいるというのは、働く人にとってとても大切なことだと思われます。

そして会社には、パワハラ防止法に基づく対策のみ整えるのではなく、一部の人の傍若無人を許さず、誰にとっても働きやすい労働環境を目指す姿勢が必要なのだと思います。

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