僕がゲイで良かったこと 第20回

第20回 僕が(多分)同性婚をしない理由 8

平良 愛香

前回の終わりに、〜では、法律婚(婚姻)ではなく「事実婚」ならしてもいいのか。実際「婚姻」には問題が多いと気づき「事実婚」を選ぶ男女も多いです。僕はどうしたいのかなあ。どうやら「事実婚」すらしないような気がします。次回に続く。〜なんて書いてしまったけど、あるニュースを紹介しておきたかったので、最初にそれだけ触れさせてください。「犯罪被害者給付金」って知ってますか。言うまでもなく犯罪被害者に支払われる給付金で、男女であれば婚姻していなくても「事実上、婚姻関係と同様の事情にあった者」も対象となるのです。ところが約20年連れ添った同性パートナーを殺害された男性が「犯罪被害者給付金が同性を理由に支給されないのは不当だ」と訴えていた裁判の控訴審で、8月26日、名古屋高裁は一審に続き、男性の訴えを退けました。「異性間の共同生活関係と同視できる社会的意識が醸成されているとは認められない」という理由でした。う〜ん、僕は同性の婚姻制度にもいろいろな問題がある、ということをこれまで書いてきたけど、やはり「認められないことは、こんな不利益が生じるのだ!」という事件だなあと感じました。現在、最高裁に上告の準備中だそうです。

 

さて、本題に映ります。問題の多い法律婚(婚姻)ではなく「事実婚」ならしてもいいのか。僕はどうやら「事実婚」すらしないような気がします。なんでだろう。

法的な「婚姻」が全てではないとしても、そもそも「結婚」ってなんだろう。二人が一緒に暮らすこと? 様々な事情で別居している人たちもいます。互いにこの人だけがセックスパートナーとしているということ? セックスをしないカップルもいますし、性的な関係を2人というしばりにしていないというカップルもいます。じゃあなんだろう。「お互いに支え合うという特別な契約をした2人組の関係性」かな。それが一番しっくりくるかもしれません。でも、どうして特別な契約が必要なんだろう。

僕には付き合って23年になる同性パートナーがいます。今でもラブラブです。(あ、セックスは既になくなってます。でも「行ってらっしゃい」のキスはしたりしています。キャー赤面)。同性同士ですから当然「婚姻」はしていません。では事実婚をしているの? どうやらそうでもないらしい。ほぼ一緒に暮らしてはいるけど住民票は別々ですので、一応「帰る家」は違います。(すみません、僕がもっぱら彼の家(アパート)に入り浸っています。ヘンなこだわりがあり、僕が彼の家に置いてあるのは「パジャマ」と「歯ブラシ」と「ピアノの楽譜」だけです。それ以外のものはせっせと持って行ったり持ち帰ったりしています。なるべく荷物を増やしたくないのと、「一緒に暮らしているわけではない」ということに僕がしたいのかも。どうしてそう思うのかは深く考えたことがないのですけど)。隣の夫婦とは2対2で仲良くしており、アパートの大家さんにも「この部屋には二人の男性が仲睦まじく住んでいる」と認識されています。長くそこにいるので、おそらく周りからは「事実婚の同性カップル」と思われているのではないでしょうか。にもかかわらず、「事実婚」だと僕たちが感じていないのは何故か。その一つは「婚」って何? という疑問。二人を何らかの価値観で結び付けようとしていないか? という小さな警戒心。自分たちが仲良く、自分たちオリジナルの関係性を大切にして楽しんでいるだけなのに、その関係性に何らかのレッテル、縛りはいらないんじゃないかな、と思うのです。しかも「婚」にしてしまうと、「(婚姻じゃないにしても)いずれは結婚する」とか、「結婚に準ずる関係」みたいな、「結婚を基準とした方向性」が匂ってくるのです。

もちろん、それを選ぶという人がいてもいいでしょう。でも感じるのは、「婚」しちゃうと、まるで二人が一体であるかのように見られる、という違和感です。「え? 結婚って二人が一体になることじゃないの?」 本当にそうでしょうか。結婚したら個人じゃなくなってしまうのでしょうか? 最小単位が個人ではなく二人一組になってしまうのでしょうか? 実はキリスト教の影響がひそかに浸透していて、「こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる」という聖書の言葉(創世記2章24節)が一人歩きしているなあ、と感じるのですが、僕は「結婚しても二人は一体ではなく二人」だと思っています。カップルがセットで見られること自体は嫌ではない(むしろ快感)のだけど、「一体である前提」であるなら、事実婚であっても、なんかやだな、と感じるのです。「恋人のままでもいいじゃん」とも思うし、恋人以上であるなら、パートナーと呼んでもいい。いずれにせよ「二人一組ではなく、やはり個人を尊重した関係であることを認めてほしい」と感じるのです。もう一つのこだわりは次回書きます。

 

 

[ライタープロフィール]

平良愛香(たいらあいか)

1968年沖縄生まれ。男性同性愛者であることをカミングアウトして牧師となる。
現在日本キリスト教団川和教会牧師。

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