スージー鈴木のロックンロール・サラリーマンのススメ 第23回

第23回 「芸名を作って、社内も芸名で通す」

 

拙著『幸福な退職』(新潮新書)で強く主張したのが、「2枚目の名刺」を作ることです。会社、つまり公用の名刺に加えて、私用の名刺を自作しようということ。

 

加えて一考したいのが、その名刺に刷る名前です。「芸名」を作ることを強くおすすめします。できるだけ早めに。そして、その芸名を、社外だけでなく社内の「通名」にするのです。

 

ロックな芸名を付ける。で、まずは社外で、ロックな人として名を上げていく。それだけでなく、社内でもその名前で通すことで、ロックな自我を社内でもアピールするところから、ロックンロール・サラリーマンとしての第一歩を踏み出す。

 

ロックな自我は社外だけにして、社内はロックを隠して、世を忍ぶ仮の姿で真面目な会社員を演じる、という人が多いのですが、私の知る限り、あまりうまくいきません。なぜなら、結局バレちゃうんですよね。

 

「あの真面目な経理の坂本さん、実は、デンジャラス坂本って名前で、パンクバンドのボーカルやってるらしいよ」なんて噂が広まったりするのです。そして隠しているものだから「わっ気持ち悪っ」とか言われて、当惑した結果、バンドをやめたりする。何と悲しいことでしょう。

 

逆に、会社の中で「経理の坂本です。趣味はパンクバンドで、実はデンジャラス坂本っていう芸名で、週末はよく下北沢でライブに出てます。今度来てください」って方が絶対今っぽい。それで社内でもパンクな仲間が増えたりとか、何と楽しいことでしょう。

 

隠す必要などないのです。会社員とサブカル趣味をあからさまに連動連携させるべきなのです。そして連動連携の鎹(かすがい)となるのが芸名なのです。

大学生時代に原稿を寄せたFM東京「ラジカル文庫」の目次。左側参照。

 

■「スージー局長」と言われる不思議な楽しさ

 

「スージー鈴木」を名乗ったのは大学時代のことでした。88~89年に、大学生としてFM東京(当時)のある深夜番組を手伝っていたのですが(そういうサブカル学生でした)、突然、私が街頭インタビューをする羽目になり、とっさに付けた芸名がこだったのです。

 

博報堂の面接の自己PRに、そのラジオ番組の話を織り込んだので、「スージー鈴木」という芸名も自己PR資料に書き込むこととなり、無事入社後、芸名が人事から社内に広まり、結果、社内でも約30年間「スージー」(後輩からは「スージーさん」)と呼ばれることとなったのです。

 

芸名で呼ばれる会社員。ぶっちゃけ、いいことばかりでしたね。興味持たれるし、親しんでもらえるし、さらにはちょっとサブカルな自我を理解してもらうサポートにもなったし。

 

年を取って出世したらしたで、若者から「スージー部長」「スージー局長」みたいな、敬われているのか、いじられているのか分からないフレーズで呼ばれるのも楽しかったし――。

 

そしてもちろん、その芸名で社外にも「デビュー」するのです。今すぐ考えた方がいいですね。最近だと、「スージー鈴木」みたいなニセ外人系というよりはクリープハイプの尾崎世界観みたいな抽象名詞系の漢字芸名がいいのではないでしょうか。

 

私、芸名付けるの好きだし、割と得意なので、ご相談ください。

 

[ライタープロフィール]

スージー鈴木(すーじーすずき)

音楽評論家、小説家、ラジオDJ。1966年11月26日、大阪府東大阪市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。音楽評論家として、昭和歌謡から最新ヒット曲までを「プロ・リスナー」的に評論。著書・ウェブ等連載・テレビ・ラジオレギュラー出演多数。

著書…『幸福な退職 「その日」に向けた気持ちいい仕事術』『サザンオールスターズ 1978-1985』『桑田佳祐論』(いずれも新潮新書)、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『平成Jポップと令和歌謡』『80年代音楽解体新書』『1979年の歌謡曲』(いずれも彩流社)、『恋するラジオ』『チェッカーズの音楽とその時代』(いずれもブックマン社)、『ザ・カセットテープ・ミュージックの本』(マキタスポーツとの共著、リットーミュージック)、『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『カセットテープ少年時代』(KADOKAWA)、『1984年の歌謡曲』(イースト新書)など多数。

 

 

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