スージー鈴木のロックンロール・サラリーマンのススメ 第7回

第7回 打合せを早く終えたいなら、打合せをど真ん中で仕切る。

スージー鈴木

 

総労働時間を減らしたい――ロックンロール・サラリーマンが、退職するまで抱き続ける思いでしょう。

サラリーマンにもいろいろいまして、中には残業が好き、会社でダラダラしているのが好き、という人がいるのですが、そんな人は、ロックンロール・サラリーマンではありません。少なくとも、この連載の読者にはいないことでしょう。

会社に拘束される時間を減らして、余った時間をロックンロールの追求に充てること。それがロックンロール・サラリーマンの一丁目一番地(この言い回し、サラリーマンあるある)。

で、総労働時間を押し上げる要素は色々とあるのですが、今回は「打合せ」について考えてみたいと思います。

実は、私の30年以上に及ぶサラリーマン生活は、言い換えれば「打合せ時間短縮への戦い」でした。

広告業界というと、「打合せが長そう」というイメージが、今でもあるかもしれません。ただ最近は、オンラインの打合せが多くなっていて、またご時世もあり、ダラダラと長い打合せは、たぶん減っていると思いますが。

いやぁ、10年以上前の広告業界は、凄まじいものがありました。2時間なんて当たり前、夜を徹した6時間打合せ、なんてのも、何度となく体験しました。

さて、「打合せ時間短縮への戦い」の一丁目一番地(二度目)、つまりもっとも効果的かつ本質的な戦略は「打合せの中身を自分が仕切ること」に尽きます。

「いやぁ、俺はもう年だから、打合せを仕切るなんて出来ないよ」――それは逆。年寄りだからこそ、打合せを効率的に仕切る義務があると思います。

「いやぁ、逆に私は若いから打合せは仕切れません」――それは分かる。でも全く何もしないよりも、後述するような仕切りへの意欲は持っておいた方がいい。

「いやぁ、逆に私は端っこの部門なので、打合せの真ん中には立てません」――それも分かる。分かるけれども、そういう意識でいると、あなたの職種はずっと端っこのままになりますよ。

打合せのど真ん中に立って、打合せ中身を仕切る。つまり打合せの一丁目一番地に立つ(えいっ三度目だ)。

では、どうずればいいか。

まずは打合せの時間設定。これはテーマにもよりますが、「トータルで60分、中身を45分で終える」くらいを目指すのがいいでしょう。

参加者のスケジューラーに「60分」の枠ができる。ということはその次に別の打合せが入る可能性がある。ということは、参加者の意識に「60分で終えねば」という意識が浸透した状態で、打合せが始まる。

その上で、自らが議長/ファシリテーターとして、45分くらいで終わりそうなイメージで、討議する流れを組んでおく。ちょっと早めに終わると、みんなうれしいものだから。

前日には、明日の打合せについての論点を、自分からメールで送る。他の人が送ってきたら、それに補足などをする。

打合せの参加者について、事前リサーチしておくのもいいですね。特に若いメンバーの最近の仕事っぷりなどを仕入れておいて、打合せの前に、「君、最近●●の仕事頑張ってるみたいね」とかいうと、その若者の打合せ参加意識が高まる、高まる。

打合せが始まったら、議論に向けての前提情報(=議論しなくていい確定情報)を、自分から共有し、真に議論すべきテーマを提示する。ここは一見、普通ですが「真に議論すべきテーマ」の「真に」がポイントです。

実は、長い打合せの多くが、「明日以降に議論してもいいこと」を議論しています。そんなものは明日以降に持ち越せばいいのです。なぜならばあなたは、みんなは、早く帰ってロックンロールしなければいけないのだから。

 

THE SHAKESのシングル『R・O・C・K TRAIN』(1986年)。よく聴きました。

 

 

●打合せにおける「放牧」とは何か

 

ですが、一番重要なのは「放牧」の時間です。これつまり、「真に議論すべきテーマ」まで行き着いたら、そこからは、議長である自分が少し下がって、メンバーの自発的な発言の流れに任せる、つまり「放牧」の時間を作るのです。

どんな意見が噴出するかと、ここは、ちょっと不安になるところなのですが、とりあえずみんなに任せてみる。仕切りたい気持ちをグッとこらえて。

なぜなら、まずは、仕切っている自分が予想もつかないような斬新なアイデアまで欲張りたいから。加えて、「他人に仕切られた感じ」が強すぎる打合せは、その打合せの結論に対する参加者のオーナーシップ(当事者意識)が高まらないから。

でも、です。いい意見、打合せを前に進めるいい意見が出てきたときには、ニコッと笑って、横山剣のごとく、ひとこと「いいね」と伝える。そのくらいの関与/そのくらいの価値判断をしながら、「放牧」の時間を終えます。

あと、やっぱり人と人の打合せですから、雑談なんかも大切。これも一種の「放牧」。自分が仕切るからと言って、何から何まで丸ごと全部を仕切ろうとするなということ。逆説的に言えば、いい仕切りのためにはいい「放牧」が必要ってこと。

で、何とか結論が出たら、それで終わりではなく、簡単な議事録と次なるテーマ(上記「明日以降に議論してもいいこと」)を、自分からメールで送る。ここまでが遠足、いや打合せなのです。

え? そんなの面倒だ? そこまでしなければならないのか、って? いや、そこまでしてまで打合せを短くしようと思うのが、ロックンロールなのです。だって、私が若い頃に聴いたTHE SHAKES(ザ・シェイクス)の『R・O・C・K TRAIN』はこう歌っていたのですから。

──そんな俺の耳元に 飛び込んできたROCK’N ROLL そいつは俺にこう言った “次はお前 お前がやるんだ”

 

 

[ライタープロフィール]

スージー鈴木(すーじーすずき)

音楽評論家、小説家、ラジオDJ。1966年11月26日、大阪府東大阪市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。音楽評論家として、昭和歌謡から最新ヒット曲までを「プロ・リスナー」的に評論。著書・ウェブ等連載・テレビ・ラジオレギュラー出演多数。
著書…『桑田佳祐論』(新潮新書)、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『平成Jポップと令和歌謡』『80年代音楽解体新書』『1979年の歌謡曲』(いずれも彩流社)、『恋するラジオ』『チェッカーズの音楽とその時代』(いずれもブックマン社)、『ザ・カセットテープ・ミュージックの本』(マキタスポーツとの共著、リットーミュージック)、『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ 1978-1985』(新潮新書)、『カセットテープ少年時代』(KADOKAWA)、『1984年の歌謡曲』(イースト新書)など多数。

 

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