スージー鈴木のロックンロール・サラリーマンのススメ 第15回

第15回 人事情報との正しい付き合い方について

スージー鈴木

 

今回はサラリーマンとして、会社、特に大企業には付き物の「人事情報」との付き合い方について考えます。

というのは、今この原稿を書いているのが、私の退職した某大手広告代理店による来期人事情報のリリース・タイミングでして、人事情報絡みのことを、いろいろと思い出しましたものでして。

私の考えは、会社員たるもの、最新の人事情報とかに関心を持っておくべきというものです。意外ですか? でも真面目にそう思いますよ。

ここで、人事情報、さらにはそれにまつわる噂話・裏話に対して、興味を持つタイプを仮に「おばちゃん」、興味のないタイプを「おっさん」とします。

これは、実際の性別とほぼ無関係です。私は男性ですが、根っから真性の「おばちゃん」ですし、女性でも「おっさん」はたくさんいます。私の目測だと、女性社員の「おっさん」は増えてきているように思います。

「おばちゃん」の方がいいと思うのです。「俺は、人事なんて興味ねぇよ」という「おっさん」も、大企業には少なからずいるするものですが、とりわけ管理職には、高い「おばちゃん力」が求められるのですから。

なぜなら、自分の部署や部門の健全なマネジメントのためには、どうしても全社の最新動向に関する情報が必要になります。さらには、その根幹である人事情報、つまりはヒトに関する最新情報に関心がないと、しっかりしたマネジメントが出来なくなるのではなかろうか、諸君!

――と、そんな大所高所の高尚な話とは別に、人事情報にまつわる噂話・裏話を肴に飲むのは、会社員の最高の楽しみのひとつだと考えます。いやぁ、本当に、あれほど面白いものはない。だから、ある程度は、人事情報を嗅ぎつけながら、それを半笑いで楽しむ「おばちゃん」になることを推奨したいと思います。

本文と特に関係はありませんが、新入社員時代の写真です。

 

●でも退職すると一転、びっくりするくらいどうでもよくなる

と、以上のように、つまりは「おばちゃん」原理主義の立場だったのです、会社にいるときには。しかし、一旦退職してみたら、当たり前ですが、会社に関する情報って、びっくりするくらいどうでもよくなる。

辞めて半年くらい経った頃でしょうか。何かの資料に、会社での最終所属部署を記入する必要があったときに、びっくり。何と、部署の名前が出てこないのです(広告代理店にありがちなカタカナの多い部署名だったことも災いしました)。

あと人の名前ですね。どんどん忘れていく。「あの面倒くさいジジイ」「あの理屈っぽい若者」「あの……」の名前が、考えても考えても出てこない。

人間の脳というもの、必要がなくなった記憶は、どんどん吐き出していくのだなぁと驚き、また、ある意味で、その合理性に感心したものです(もちろん寄る年波も影響したことでしょう)。

さて、会社員時代の話に戻せば、特に年かさの方には、近い将来「びっくりするくらいどうでもよくなる」という前提で、人事情報に接することをおすすめします。

つまり、ある程度は「おばちゃん」として、人事情報に半笑いで接しながら、それでも、必要以上に気にし過ぎたり、翻弄されることは避けるべきなのです。だって、繰り返しますが、いつか近いうちに「びっくりするくらいどうでもよくなる」のですから。

かくいう私も、会社員だった頃、人事情報が気になって気になってしょうがなかったのです。人事情報に翻弄され、右往左往し、そして盛り上がったり、どーんと落ち込んだり。

でも、せっかくだから何度でも繰り返しますが、「びっくりするくらいどうでもよくなる」。だから、いきおい半笑いで受け流しながら、人事に翻弄されて、家庭とか育児とか趣味とか、仕事以外の大事なものを棒に振ってはいけないのです。

「人事情報で盛り上がっているうちが華」ぐらいの構えで、半笑いで楽しみながら、「人事情報がどうでもよくなってからも華」、人生に2つの華を咲かせましょうじゃありませんか。

 

 

[ライタープロフィール]

スージー鈴木(すーじーすずき)

音楽評論家、小説家、ラジオDJ。1966年11月26日、大阪府東大阪市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。音楽評論家として、昭和歌謡から最新ヒット曲までを「プロ・リスナー」的に評論。著書・ウェブ等連載・テレビ・ラジオレギュラー出演多数。

著書…『桑田佳祐論』(新潮新書)、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『平成Jポップと令和歌謡』『80年代音楽解体新書』『1979年の歌謡曲』(いずれも彩流社)、『恋するラジオ』『チェッカーズの音楽とその時代』(いずれもブックマン社)、『ザ・カセットテープ・ミュージックの本』(マキタスポーツとの共著、リットーミュージック)、『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ 1978-1985』(新潮新書)、『カセットテープ少年時代』(KADOKAWA)、『1984年の歌謡曲』(イースト新書)など多数。

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