スージー鈴木のロックンロール・サラリーマンのススメ 第18回

第18回 究極の無競争主義による評価制度を考える

スージー鈴木

 

新刊『幸福な退職 「その日」に向けた気持ちいい仕事術』(新潮新書)がさる5月17日、無事出版のはこびとなりました。この連載のスピンオフのような本なので(あ、こっちがスピンオフか?)ぜひ手にとってみてください。

 

さっそく色んな感想をいただいておりますが、まずは「定年退職直前の人というより若手向けの本だよね」というご意見。そうなんです。コンセプトは「幸福な退職」そのものというより「『幸福な退職』に向けて、今日から何をどうするべきか」という感じなのです。なので、中堅も若手も、もっと言えば新人向けの章もあったりします。

 

あと、ちょっとネガティブなものとしては「そうは言っても、やっぱり評価が落ちるのが怖いから、ここで書かれているような自由な働き方はしにくい」という意見もちらほら。

 

そうなんですよね。評価、会社員はやっぱり気にしますよね。かくいう私も、約30年間の会社員生活は、自分の評価のことばかりを考えていたようなものでした。でも辞めてみて思うのです。「なんで、あんなに評価を気にしていたんだろう?」と。

 

確かに昇進はうれしい。でも、特に最近は決して、給料がポーンと跳ね上がったりはしない。より大きいと思うのは自尊心が満たされることなのですが、でも、給料がポーンと跳ね上がったりしないのだから、満たされる自尊心も、それほどのものではないはずでしょう。

 

「評価」、もっと言えば「相対評価」というものを気にさせる、気にさせ過ぎる「何か」が、会社の中に渦巻いているはずなのです。ごめんなさい、その正体が何かは分からないのですが、もしかしたら受験勉強の記憶とか、あと日本人の国民性のようなものが影響している気がするのですが。分かりません。

前回と同じ画像ですいません。 売りたいのです。

 

 

  • 年功序列、同一年齢=同一賃金という新しい「会社主義」

 

そんな中でも、無駄なく・無理なく・機嫌よく、うまーくやっちゃおうじゃないかと提案しているのが、今回の新刊なのですが、もし私が、この時代、自由に人事制度を考えることができるのであれば、提案してみたいことがあるのです。

 

それは「究極の無競争主義」です。具体的には「年功序列」、そして「同一年齢=同一賃金」という人事マネジメントです。

 

「てめぇ昭和かよっ」というツッコミがくるでしょう。まさにその通り。ただ、例えば高度経済成長やバブル経済など、成長軌道だった昭和と、現在のような低成長、いや衰退軌道の令和では、それらの意味合いが違ってくると思うのです。

 

衰退軌道における「成果主義」が、昔ほど強力なものなのか? というか、逆にどれほどのストレス、問題、弊害を生み出しているのか? こんな疑念、最近の会社員(+最近まで会社員だった人)なら分かるはずです。最近では「能力主義」「成長主義」など、「成果主義」と似て非なるような言い回しの概念がありますが、つまるところ結局は大差ないように思います。

 

だとしたら、「うちの会社は年功序列、そして同一年齢=同一賃金。できれば終身雇用も目指しています。だから安心して働いてください。その代わり、ダイナミックに給料は増えないので、そういうのがお望みならば、転職とか、スタートアップの勉強とかもしといてね」という方が、就職希望者も増えそうだし、何より今っぽいのではないか。ロックンロールなんじゃないか。

 

管理職と平社員の差をどう付けるのかというツッコミが出てくるかもですが、私が思うのは、そもそも差を付ける必要があるのかということです。管理職は平社員の上と位置付け、給与上も差を付けなきゃいけないのか。管理が適している人は管理をすればいいし、現場が好きな人はとことん現場にこだわった平社員でいい。そこに上も下もなくていいのでは?

 

――これ、つまりは経済学でいう「社会主義」に近いのかもしれません。でも、ここでは一国の経済という、そんな大所高所な話ではなく、単なる一企業の話です。だから「社会主義」というより「会社主義」、新しい「会社主義」の方向性として提案しているのですが――これ、どうでしょう。間違ってますかね?

 

 

[ライタープロフィール]

スージー鈴木(すーじーすずき)

音楽評論家、小説家、ラジオDJ。1966年11月26日、大阪府東大阪市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。音楽評論家として、昭和歌謡から最新ヒット曲までを「プロ・リスナー」的に評論。著書・ウェブ等連載・テレビ・ラジオレギュラー出演多数。

著書…『桑田佳祐論』(新潮新書)、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『平成Jポップと令和歌謡』『80年代音楽解体新書』『1979年の歌謡曲』(いずれも彩流社)、『恋するラジオ』『チェッカーズの音楽とその時代』(いずれもブックマン社)、『ザ・カセットテープ・ミュージックの本』(マキタスポーツとの共著、リットーミュージック)、『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ 1978-1985』(新潮新書)、『カセットテープ少年時代』(KADOKAWA)、『1984年の歌謡曲』(イースト新書)など多数。

タイトルとURLをコピーしました