もう一度、外国語にチャレンジ! スペイン語を学ぶ ~メキシコ編~

第1回 なぜメキシコ? グアナフアトって、どんなとこ?

 

文・写真 伊藤ひろみ

「学生時代にもっと外国語を勉強しておけばよかった!」という声をよく耳にする。外国へ出かけたときに、はがゆい思いをした人も少なくないだろう。仕事上、外国人の上司や部下、取引先、顧客などとコミュニケーションをとらなければならなくなったり、海外出張を命じられたりと必要に迫られることもある。

語学学習に必須の記憶力、集中力、柔軟性、耳のよさなどは、若さにかなわないのかもしれない。だとしたら、中高年になってから、語学力をつけることは不可能なのだろうか。

そう思って私は、ささやかな期待と大いなる不安を胸に、まずは都内でスペイン語学習をスタートしたのだった。そして2023年2月、約1カ月間の語学留学を決行した。目指すはメキシコ・グアナフアト。コロナ禍を経て、満を持しての渡航となった。

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グアナフアトの街角で。店頭にはカラフルなソンブレロが並んでいる

 

正直に言えば、近年までスペイン語に興味はなかった。長年英語と格闘し続けてきたことに加え、仕事で韓国に赴任したため、この20年ほどはひたすら韓国語と向き合う日々。それ以外の外国語まで手を伸ばす余裕がなかった。だがある日、スペイン語講座の告知が目に留まり、何を血迷ったのか、「やってみようかな」と思い始めた。この心境の変化を自分でもうまく説明できないのだけれど。

実は、第2外国語として大学でフランス語を2年間学んだ。基礎文法を習い、当時は辞書をひきひきマルグリット・デュラスなんかを読んだりもしていたのだが、なにせ古い話。その後は使う機会もなく、さびつくだけさびついていた。バリを旅する際、昔のテキストを引っ張り出し、にわか勉強をしたが、これがさっぱり。「スペイン語も同じ運命をたどるかもしれないな」

そんなわけで、まったくもって計画的ではないし、仕事につなげようというのでもない。「新しい言語を知ることで、何かプラスになるかも」。その程度の軽い気持ちで、都内にある学校で学習をスタートした。今から4年ほど前のことである。

2020年4月、緊急事態宣言発令下で授業形態がオンラインに変わった。細々と続けてはいるものの、週1回1時間半の講座では、まさに亀の歩み。「3つ習っては2つ忘れる」の繰り返しである(それどころか、「3つ習って3つとも撃沈」ということもしばしば)。自分の努力の足りなさを歳のせいにし、コロナのせいにし。まったくもってダメダメ学習者の典型である。

スタート時の熱が冷め、数か月間、ブランクを経たりしながらも、のんびりと学び続けた。「いつかは本場で勉強したいな。」そんな希望も抱いたが、なにせコロナ禍、ひたすら我慢の日々が続く。パンデミックが落ち着き始めた2022年の秋ごろから、短期留学を具体化すべく動くようになった。

スペイン語の勉強はスペインでするもの、そう思い込んでいた。だが、スペイン語圏に詳しい友人のひとりが「メキシコ・グアナフアトはどうか」と勧めてくれた。

「えー、メキシコ? 行ったことないけど危なくないの?」 現地の状況をまったく知らないうえ、スペイン語もろくにできない身で、大丈夫だろうか。

そんな私の気持ちを察してか、友人はこう続けた。「グアナフアトなら、治安も悪くないし、語学学校もいくつかある。何より、町自体がディズニーランドみたいにかわいらしいんだ」

グアナフアトにはカトリック教会が多い。写真はベレン教会

以来、グアナフアトが有力候補のひとつに急浮上した。あれこれ情報収集するなか、偶然、現地に住んでいたという知人ともつながる。やりたいことがあれば、とにかく行動に移すことが大切である。アンテナを立て、手を伸ばし続けていれば、そこにひっかかることが増えてくる。結局、「スペインのどこかへ」という計画はしばしおあずけ。今回の旅の目的地はグアナフアトとなった。

グアナフアトは、スペイン語でGuanajuatoと表記する。地図で見ると、メキシコのちょうど真ん中あたり、首都メキシコシティからは北西約370㎞に位置している。周りは山々に囲まれている中央高原地帯で、標高は約2000m。スペイン植民地時代に築かれたコロニアル都市のひとつである。現在の人口は約20万人。都市というより、町というほうが適切な規模のようだ。山の斜面に連なるカラフルな家並みが美しく、町全体が世界遺産に登録されている。

こんなふうにして2023年2月、未知の国メキシコ・グアナフアトへと旅立った。

 

ミニミニ・スペイン語レッスン〈1〉

★コロニアル都市(植民都市)las ciudades coloniales(ラス・シウダーデス・コロニアーレス)

ciudadは「都市・町」の意味で、英語の「city、town」にあたり、ciudadesはその複数形。colonialは、「植民地の」という形容詞。スペイン語では、名詞を修飾する形容詞は、名詞の後ろに置くのが基本原則のため、この語順になる。スペイン語のすべての名詞は、男性・女性の区別があり、ciudadは女性名詞。形容詞は、修飾する名詞に合わせ、性と数を一致させなければならない。lasは名詞につく定冠詞。こちらも名詞に合わせて、性数一致が原則である。ことほど左様に、スペイン語には日本語にはない、やっかいなルールが目白押し。

くしくも、英語でも「植民地の」はcolonial。だが、英語の場合は、2つめの「o」にアクセントがあるが、スペイン語の場合は、「a」にアクセントがあり、ここを強く(いくぶん長めに)発音するのがポイント。

16世紀、スペイン人たちはGuanajuatoのほか、いくつかの絢爛豪華なコロニアル都市las ciudades colonialesをメキシコに築いた。

 

 

[ライタープロフィール]

伊藤ひろみ

ライター・編集者。出版社での編集者勤務を経てフリーに。航空会社の機内誌、フリーペーパーなどに紀行文やエッセイを寄稿。主な著書に『マルタ 地中海楽園ガイド』(彩流社)、『釜山 今と昔を歩く旅』(新幹社)などがある。日本旅行作家協会会員。

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