もう一度、外国語にチャレンジ! スペイン語を学ぶ ~メキシコ編~

第9回 Vivaメキシカンフード!

文・写真 伊藤ひろみ

 「外国語学習に年齢制限はない!」「ないのではないか?」いや、「ないと信じたい!」

そんな複雑な思いを抱えながら、まずは都内でスペイン語学習をスタートさせた。そして2023年2月、約1カ月間の語学留学を決行した。目指すはメキシコ・グアナフアト。コロナ禍を経て、満を持しての渡航となった。

 

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<第9回> Vivaメキシカンフード!

 

人気の屋台でタコスにトライ!

スペインでトルティージャ(tortilla→発音については、ミニミニ・スペイン語レッスンで解説しています)といえば、卵にジャガイモなどを加えて作るスペイン風オムレツのことだが、メキシコでは、トウモロコシや小麦粉の粉を練って薄く丸く作った皮のことを指す。そのトルティージャにいろいろな種類の材料をのせ、包んで食べるのがタコス(tacos)。メキシコを代表する料理である。家庭でもレストランでも供されるが、そのタコスを扱う屋台が、町の至るところに出没する。朝食や昼食としてがっつり食べたり、小腹がすいたときに立ち寄っておやつ代わりにしたり、いつでもどこでも気軽に楽しんでいる姿を見かける。

バラティージョ広場で営業している屋台をのぞいてみた。土曜の午前10時過ぎだったが、すでに味わっている人が4~5人、できあがりを待っている人が3~4人。時間からすると、朝食として食べに来たお客さんのようだ。

大きな鉄板の上で、トルティージャを焼いているおばさんがひとり。さらに別の女性が、焼けた皮の上に具材をのせたり、ソースをかけたりしてタコスに仕上げていく。お客さんたちは、自分の好みやその日の気分に合わせて、具材や味付けなどをリクエストしている。メインは牛肉、豚肉、ソーセージなど。それらに細かく刻んだトマト、玉ネギ、レタス、香草などをのせる。さらに、サルサ(salsa)と呼ばれるソースをかける。注文してからできあがるまで、2~3分くらいだろうか。まさにオーダーメイドのファストフードである。

その日の朝食はオルガさん宅で済ませてきたが、眺めているうちに試したくなってきた。スペイン語で何をどう注文すればいいのかわからず、まずは他の人たちの様子を観察する。材料などの名前が言えなくても、並んでいるものを見ながら指させばよさそうだ。見た目だけでソースの味までわからなかったので「ピカンテ?(辛い/picante)」と尋ねる。タコスの注文に慣れていないとわかったようで、無難なところを選んでくれた。

トルティージャのできあがりを待つお客さんたち

 

腰掛けている人もいるが、屋台が準備したプラスチックの椅子の数が少ないのか、立ったまま食べている人がほとんどである。タコスはお上品に食べるものではなく、大きな口でがぶりと頬張るのがいい。それでも皮から具材が飛び出してきて、落っこちそうになる(いや実際、落っこちた!)。

「いろんな味がミックスされていて、なかなか美味! しかもボリュームたっぷり!」。聴こえてくる会話は、スペイン語オンリー。これからミサが始まるのか、教会の鐘が鳴り始める。足元では、鳩たちが通りに落ちたタコスのおこぼれをつついている。青空のもとタコスにかぶりつき、メキシコにいることを実感する瞬間!

屋台によって、タコスの具材や味も微妙に異なり、それぞれの個性を競っているという。朝食や昼食、おやつとして販売するのがメインかと思ったら、夕方から営業する屋台もあった。店を変えて、いろいろ食べ比べてみるのもおもしろそうだ。

 

これ抜きでメキシコ料理は語れない

町中には、トルティージャだけを製造販売している店もある。生地を作り、ベルトコンベアのような機械で丸く薄くのばし、しっとりこんがり焼き上げる。人気のトルティージャ店では、この皮だけを何枚も買いにくるお客さんが列をなす。家庭に持ち帰り、好きな具をのせてタコスにしたり、皮を使って別の料理にしたりするようだ。タコスのみならず、メキシコにはトルティージャベースの料理にあふれている。

トルティージャ専門店で皮を作っているところ

 

オルガさん宅で肉料理の日には、包んで食べるようにとトルティージャがテーブルに並んだ。専用のかごのような入れ物に、温めたトルティージャを何枚も重ねて入れ、皆が好きなだけ取れるようにしていた。家庭料理においても、この食材抜きには成り立たないようである。

メキシコ料理には、サルサと呼ばれるソースも大切な役割を果たす。唐辛子がたっぷり入った激辛のものから辛さ控えめのソースまで、赤いトマトをベースにしたもの、グリーントマトを使った緑色のものなど味も見た目も多種多様である。タコスに限らず、いろいろな料理にかけ、味のバリエーションを楽しむ。

オルガさんが作ってくれたトルティージャを使った料理

 

ワカモーレ作りに挑戦!

ある日の午後、オルガさんにワカモーレ(guacamole)の作り方を教えてもらう。これもメキシコでは超ポピュラーなソース(ディップ?)である。ベースになる材料はアボカド。さらに玉ネギ、トマト、香草、唐辛子、レモン汁、塩を準備する。

 

<ワカモーレの作り方>

  • アボカドは種を取り、スプーンで皮から実をはずす。
  • ①をボウルに入れ、スプーンの背で押しつぶし、なめらかにする。
  • 玉ネギをみじん切りに、トマトは1センチ大くらいの角切りにする。香草、唐辛子は細かく刻んでおく(量はお好みで。苦手なら入れなくてもOK)。
  • ②と③合わせ、よく混ぜる。塩をふり、レモン汁をかけてできあがり。

 

アボカドの緑にトマトの赤、と見た目にもいい感じ。唐辛子を控え目にしたので辛くなく、レモン汁がきいて、思ったよりさっぱりした味になった。これをトトポス(totopos)につけて食べるのがメキシコ流だ。トトポスはトルティージャを一口大に切って、軽く揚げたもの。スナックとしても人気で、スーパーなどでも購入できる。

オルガさんに習ったワカモーレ。トトポス(右上)との相性抜群

トルティージャチップスとして広く販売されているトトポス

 

 

日本食が広がりつつある?

大型ショッピングモール、プラサ・ポスエロス(Plaza Pozuelos)へ。市内の南のはずれに位置しているため、歩いて行くにはいささか遠く、ラ・パス広場近くからバスに乗車。15分ほどで最寄りのバス停に到着した。建物内には、衣料品、日用品、雑貨、フードコートなど多くの店舗が並んでいる。車で来る人が多いのか、駐車場もとても広い。

ショッピングモール内のラ・コメール(La Comer)というスーパーマーケットへ入ってみる。どのコーナーもゆったりとした造りで、商品の数も多い。目をひいたのは日本食のコーナー。醤油やみそなど日本の料理に欠かせない調味料が並んでいるが、値段は日本より高め。輸送代などを考えると、そうなるのもいたしかたないところだろう。日本でおなじみのカップめん、即席めんなども販売されている。ネーミングは同じだが、パッケージが異なる。メキシカンに合わせて、味も違っているようである。

日本ブランドの調味料が並ぶスーパーのコーナー

 

グアナフアトには、わずかながら日本食レストランもある。“Sushi”と看板をあげているところも見かけたが、試してみる機会を逸したので、味は不明。おにぎりやどんぶり、総菜などを提供する日本料理店もあった。日本人だけでなく、メキシコ人客にも人気のようだ。グアナフアトで和食が徐々に広がりつつあるのだろうか。これからに期待したい。

市内で幅を利かせるのは、やはりメキシコ料理。フアレス通りを中心に、レストランが軒を連ねる。とりわけ目立つのは、ラ・パス広場、ラ・ウニオン広場付近。店内、テラス席ともに賑わっているが、見かけるのは外国人ばかり。地元の人たちが外食するときは、あえてこのあたりは避け、少し離れた場所を選ぶ人が多いようである。イダルゴ市場横に大きな食堂街があるが、こちらはメキシカンが多い印象だった。

 

ミニミニ・スペイン語レッスン〈9〉

Palabras de Cocina

本文で紹介したものを中心に料理関連の言葉を紹介しよう。

 

・トルティージャ(tortilla):スペイン語でtortillaは、トルティージャもしくはトルティーヤと発音する。llaはジャ、ヤのどちらでもOK(区別をしないため)。

・タコス(tacos):スペイン語ではtacoが基本の語。さらに複数のsがついてtacosとなる。日本ではなぜかsがついたタコスというネーミングで定着している。

 

◆ワカモーレの材料(Ingredientes del Guacamole)

・アボカド(aguacate/アグアカテ)メキシコ料理にポピュラーな食材。アボカド(avocado)は英語。

・赤トマト(jitomate/ヒトマテ)スペイン語で一般的にトマトはtomate 。メキシコでは、赤トマトとグリーントマト(tomate verde)を区別している。

・玉ネギ(cebolla/セボジャ)

・唐辛子(chile/チレ)種類が多くhabanero, serrano, guajilloなど名称もいろいろ。味を表現する形容詞「辛い」(picante/ピカンテ)も要チェック!

・香草/コリアンダー(cilantro/シラントロ)

・レモン汁(jugo de limón/フーゴ・デ・リモン)

 

[ライタープロフィール]

伊藤ひろみ

ライター・編集者。出版社での編集者勤務を経てフリーに。航空会社の機内誌、フリーペーパーなどに紀行文やエッセイを寄稿。主な著書に『マルタ 地中海楽園ガイド』(彩流社)、『釜山 今と昔を歩く旅』(新幹社)などがある。日本旅行作家協会会員。

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